2015/7/5 昼のNISHIURA NIGHT vol.1


(ライブ写真:出田恵史、文:仲真)

 ドラマー西浦謙助人生二度目の主催イベントである、昼のNISHIURA NIGHTvol.1。vol.1でなぜ二度目なのかという点に関してはvol.0のレポートをご参照ください。なぜ昼でナイトなのかは西浦本人にご確認ください。

♪Bon
♪Bon

 前回はDJとライブアクトが入り乱れるオールナイトイベントであったNISHIURA NIGHT。今回は渋谷7th FLOORに会場を移し、エレクトリックリボンザ・プーチンズ、特別編成梅雨時ジメジメバンド(仮)というライブアクトのみのイベントとなった。特別編成梅雨時ジメジメバンド(仮)の説明は後ほど。

 

 とはいえ、出演者としてはクレジットされていなかったが、開場後と開演前の時間はスタッフでもあり前回も出演した♪BonDJをつとめていた。主催者である西浦謙助が在籍したバンドや、Luminous Orangeやタルトタタンなどの演奏や作詞で関わった曲ばかりの西浦縛りプレイで客席を温める。約30分のプレイが終わると、主催者の西浦謙助がステージに上がり、挨拶と開会の辞が述べられた。

西浦謙助

 11:15開場、11:45開演という「NIGHT」という名を関するイベントとしては出色の早い時間の始まりである本イベントだが、「某バンドを辞めてから稼ぎが非常にやばい」という西浦の挨拶で一気に夜のような切ない空気が開場に充満する。ビジネスパーソンのインタビューによくある「ろくろ」ばりに、妙に多い手振りが印象的な、ネタとも本気ともとれないMCであった。NISHIURA NIGHTというイベントが西浦の新たなる収益源のひとつとなることを願うばかりである。

あの男

 トップバッターは ロシア系怪電波ユニット、ザ・プーチンズ。本イベントの2ヶ月後、9/13に開催された、ファッショナブルタウン吉祥寺で3会場を使用する「全日本テルミンフェス」をソールドアウトの大成功に導いた彼ら。そんなザ・プーチンズがステージに現れる前に、スクリーンに見覚えのある「あの男」の顔が。

 

 本イベントに関する所感を述べるあの男。エレクトリックリボンが大好きで、今年の日露首脳会談は8月のTOKYO IDOL FESTIVALに合わせたいのだという。実際に今年の夏、日露首脳会談が行われたという情報は聞いたことがないものの、もしかしたらお台場にて、強面のあの男がエリボンに対してケチャをかましていたのかもしれない。

街角マチコ

 あの男の前説?が終了し、街角マチコがステージに一人で登場。街角マチオは埼京線の遅延によって遅刻しているそうで、マチコのテルミン独奏による「八十日間世界一周」からライブが始まった。

 

 ユーモアの限りが尽くされたミュージックビデオや、演劇がメインの「本公演」などの活動で知られるザ・プーチンズだが、マチコは竹内正実(テルミンの開発者であるレフ・テルミン博士の血縁者で直弟子であったリディア・カヴィナに師事)の弟子という実力派である。しっとりとした演奏で聴衆の心もグッと掴まれるスタートであった。

 

 そして、街角マチオがようやくステージに登場する。いかにもやる気なさげで、目の下にはアイブラック(野球やアメリカンフットボールの選手が、外でのデーゲーム時に光の反射を防ぐためにつけるもの)のような大きなクマが。相当に疲れているようである。人とのコミュニケーションが元々苦手だと言いながらDJセットの前につくマチオ。

L to R:Vo/DJ/Gt・街角マチオ、テルミン・街角マチコ
L to R:Vo/DJ/Gt・街角マチオ、テルミン・街角マチコ

 マチオがけだるげに機材を操作すると、自らの声であろう「母さん……」というサンプルソースが繰り返し流される。気がつけばマチオはCorneliusばりに最前列の女性客をステージに上げていた。しかし、マチオはその女性にテルミンを弾かせるわけでもなく、彼女は島根のネイル専門学校を出ていて、自分と主催者の西浦であれば西浦推しだが、僕にも惹かれている――などといい加減な紹介をするのであった。

ザ・プーチンズ

 続くMCで、話題が梅雨の過ごし方になると、マチオがさらに不機嫌そうな顔に。「嫌な思い出がある」とクリスチャン・ラッセンについて語り始めた。原宿で綺麗なお姉さんに声をかけられて、気がついたら多額の借金を背負っていたことがあり、そのときラッセンの絵を買わされた記憶が残っているという。おまけに帰り道で車にはねられ、救急隊員がジェームス・ブラウンにそっくりだったときの思い出で作った曲を歌う、と唐突に3曲目「テルミン救急車」がスタート。

 

「ああ、キミを助けられなかった。もしキミがまた事故にあったら今度こそゲロッパしてみせる。こんなんで何がセックスマシーンだ」

 

 という「救急隊員JB本人じゃねーか」という述懐や、サイレン音のドップラー効果をテルミンで再現する演奏など、ザ・プーチンズらしさが凝縮されたナンバーであった。

ザ・プーチンズ

 曲が終わり、マチオは「地球が始まって以来ここにいる全員が集まるのが最初で最後の奇跡」と語り始める。先ほどの女性客と、近くにいた男性客をステージ最前に並べた椅子に座らせ、「2人が出会えたことは奇跡だが、恋愛のルールには従ってほしい」ともっともらしく語って4曲目「恋愛契約書」が披露された。

 

 続くMCにて、マチオは「大好きなアーティストがいるのだけれど、世の中の人に全然知られていない。」と不満を述べた。そのアーティストの名は「中◯ヤスタカ」。パ◯ューム、きゃりー◯みゅぱみゅなど、立て続けにヒットさせたことでようやく世間に評価されつつあり、人にも薦めているが、まだまだ中◯氏の才能に評価が追いついていないという。

ザ・プーチンズ
「気ぃー持ちいぃーーーー!!」

 そんなマチオの夢に、ある日中◯氏が登場し、「変な曲ができちゃって、これどこにも出せないからマチオくん歌いなよ」とくれた曲をこれから演奏するという。マチコは「私その曲知らないんで、見てますね」と言って脇に退き、5曲目「ナニコレ」のイントロが始まった。マチオのソロによる、脱法ドラッグを使用したかのような超ハイテンション歌唱であった!

 

 曲が終わり、「いい曲ですねえ」と言うマチコにマチオは「僕の曲じゃないんでね」と照れ笑い。そして最後に、正真正銘街角マチオの作詞・作曲による、アルバム『ぷりぷり』にも収録されている「デンパデンパ」でフロアを大いに盛り上げ、ザ・プーチンズのアクトは幕を閉じた。

 転換時は再び♪BonがDJを務め、西浦も再度ステージに登場、続いてのアクトであるエレクトリックリボンを紹介する。前日、NISHIURA NIGHT vol.0にも出演したベッド・インが下北沢SHELTERにて初のワンマンライブを開催し、エリボンがそのオープニングアクトを務めていたのだが、その場でメンバーのpippiが成人ゲームの声優をやっていたことを告白、他のメンバーがビックリするという光景が繰り広げられたことを説明していた。恐るべしエレクトビックリチンポン(ベッド・インの中尊寺まいが用いるエリボンの名前をわざと間違える際の呼称)――もといエレクトリックリボン。

エレクトリックリボン

 西浦も語るように、エリボンの特徴はリーダーのasCaが自ら曲を手がけている点である。asCaは他のアイドルグループへの曲提供や、DTM講座の講師などの活動も行っている実力派。ライブではマニピュレートも務めている。まずは、そんなasCaと噂のガヤ担当pippiが機材の前にスタンバイしてトラックが流れ始める。現在のメンバーになる以前の体制の時期にシングルリリースされたこともある「steal me」だ。

エレクトリックリボン

 そして、フロアをかき分けてボーカルの3人がステージに。ericaは前日のベッド・インのおギグでも大活躍した岩下の新生姜ペンライトを持っている。続いて、ミスiD2016のセミファイナリストとなったことが9/23に発表されたnatsuki、最後のchiakiは妙にゆっくり歩いているなと思ったらパンを観客に配りながらの登場であった。

 

 ちなみに、この日はメンバーが私服を着用するという特別企画。いつもと違うメンバーの魅力が見られる中でも、ペンライトとの相性も抜群の「LOVE ME TENGA.」Tシャツを着ていたericaの破壊力は抜群であった。

エレクトリックリボン

 実に多様性のある出演陣の中でも唯一のアイドルであるエリボン。2曲目はライブの定番でもあるBLANKEY JET CITYの「赤いタンバリン」。最前付近は熱いファンたちで一杯だが、おそらくアイドル現場自体を初体験の観客も少なからずいそうな現場ながら、この曲を知らない観客はほとんどいないはず。pippiとasCaもステージ前方に出て観客を煽りまくっていた。

 

 メンバー紹介とMCを挟み、続く3曲目は、現在の体制になって初めてリリースされた音源でもある「クリームソーダ」。エリボンファンの熱気はさらにヒートアップ。熱いMIXが発動され、勢いはそのままに4曲目「シークレットソング」になだれ込む。

エレクトリックリボン

 続いて、MCを挟みラストとなる5曲目は「波音チューニング」。音大声楽科卒業のericaの聴かせる歌い出しから、全員の声が乗ると一気ににぎやかになるエリボンらしいナンバーで幕を閉じた。

 

 本イベントの1週間前に、現体制初のフィジカルリリースとなるCD「無敵ガール」のリリース(10/13発売)と、エレクトリックりぼん時代を通じて、キャリア史上初となるワンマンライブを12/29に渋谷WWWで開催することを発表していたエリボン。ザ・プーチンズや特別編成梅雨時ジメジメバンド(仮)目当ての観客にも強い印象を残したに違いない。

L to R:erica、natsuki、chiaki、asCa、pippi
L to R:erica、natsuki、chiaki、asCa、pippi

 実はそんなエリボン、9/21に、創始者であり全ての楽曲を手がけてきたリーダーのasCaが、楽曲制作に専念するために、渋谷CHELSEA HOTEL10/24に開催される「エレクトリックリボンasCa卒業公演~good-bye party~」で卒業することが発表されている。他にも、今月は多数のライブや、10/12~20まで8日連続となる「無敵ガール」発売記念インストアライブが予定されている。詳しくは公式サイトのスケジュールページをご確認の上、この5人体制のエリボンを見られるラストチャンスをお見逃しなきよう。

野佐怜奈、西浦謙助

 ♪Bonの転換DJを経て、遂に主催者西浦を含む特別編成梅雨時ジメジメバンド(仮)の出番。フライヤーによると、ジメジメバンドは「ドラムス或いは他にも」が西浦、ギター・畠山健嗣H MOUNTAINS、ぱいぱいぱいチーム)、ベース・ナガイケジョーSCOOBIE DO)、キーボード・ハジメタル(exミドリ、誰でもエスパー)、ボーカル・野佐怜奈(野佐怜奈とブルーヴァレンタインズ)というメンバー。「昼間から無闇矢鱈な豪華メンバーで、湿度と礼節の国JAPANの夏を代表する往年のヒット曲等を演奏予定でございます」とのことだ。

 

 まずステージに西浦が登場。「老若男女楽しめる選曲にしたかったが、(観客は)30代ばっかりだろうと選曲、20代以下は切り捨て」と語る。野佐もステージに上がると、「男と女のラブゲーム」(葵司郎&日野美歌)のオケが流れ始める。二人きりのデュエットからライブがスタートした。野佐はさすがの歌唱力だが、西浦も味のある声で意外に聴かせてくれる。

西浦謙助

 西浦がドラムセットに移動し、バンドメンバーもステージに勢揃い。1曲目(「男と女のラブゲーム」はイントロ扱いか)と言って「青い珊瑚礁」(松田聖子)の演奏が始まる。野佐の伸びやかな歌唱と、鉄壁のバンド演奏でしっかりと聴かせてくれる。管弦楽器をふんだんに盛り込んだ、原曲の魅力を損なわないバンドアレンジは作編曲家としても活躍し、8月にソロアルバム「SUPER SOLO 2」もリリースしたハジメタルによるところが大きそうだ。

 

 とはいえ、昭和の大ヒット歌謡曲は当代一流の作家・演奏家が集められている曲ばかりである。腕利き揃いのジメジメバンドでもミスがあったのか、はたまた練習が大変だったのか、西浦は曲終わりに「歌謡曲はめちゃくちゃ難しい」と苦笑いを浮かべていた。そして2曲目は「夏のお嬢さん」(榊原郁恵)。

 

 曲が終わり、西浦が「(曲が)短くて思ったより早く終わりそうなので、嫌いな人の話をしましょうか」と唐突な振りをメンバーにかます。自分で言っておきながらぼんやりとした西浦、野佐、ハジメタルと煮え切らないコメントが続くが、ナガイケは「嫌いな人」というテーマ自体をぶっちぎり、共演したザ・プーチンズを激賞する。共演することが決まって何気なくYouTubeで見てみた「先輩」のPVで、久方ぶりに“動画を見ながら吹き出す”という経験をしたらしい。そうして期待値が上がりまくっていた中で見た今日のライブも大満足であったという。

 

 まだ時間が余っているのか、続けて、内臓のデリケートさには定評があり、街中の清潔でウォシュレットのあるトイレの場所に詳しい西浦は、渋谷のオススメはBunkamuraのトイレで抗菌スプレーもあってよい、と豆知識を披露。続けて、

 

「普通ライブはしり上がりに良くなっていくけど、我々はやればやるほどクオリティが下がっていく。次の曲は最たるものですが、やってる我々は死ぬほど楽しい」

 

 と言って演奏を始める。曲はCLASSの「夏の日の1993」!! 男性陣が次々にリレー方式でボーカルをとる豪華仕様であった。こんなに歌い上げるナガイケジョーを見られる機会は滅多にないだろう。

特別編成梅雨時ジメジメバンド(仮)
L to R:Key・ハジメタル、Vo・野佐怜奈、Ba・ナガイケジョー、Dr・西浦謙助、Gt・畠山健嗣

 曲が終わって、西浦はさんざん練習して読み込んだこの曲の歌詞の凄さについて触れ、「ある意味女性蔑視」だと語る。そこから、“その素肌そのSEXY”→アイドルという連想ゲームが起こり、今で言えば先日温泉宿で一悶着あったかもしれない某アイドルですかね……と西浦がハジメタルに振る。「分からないですね」「芸能界本当に怖いです」「アカウント消えてたら察してください」と頑なに言及を避けるハジメタルであった。

野佐怜奈、ナガイケジョー

 さらに4曲目「夏の扉」(松田聖子)と5曲目「シーズン・イン・ザ・サン」(TUBE)の間のMCでも、「夏の曲で攻めます。本当はジメジメバンドだけに雨の曲も考えて、ASKAの「はじまりはいつも雨」をやろうかとも思ったけど、あまりに湿っぽい&裁判の問題もあり……」と語る西浦。何か芸能界に恨みでもあるのだろうか。

 

 「シーズン・イン・ザ・サン」では、西浦が「なんか音楽っぽいことをナガイケジョーと畠山健嗣で!」と言うザックリ過ぎる指示で間奏に突入。しかし、さすがの腕利き二人は本当に音楽っぽい(小並感)インプロヴィゼーションを見せ、会場のテンションも一気に上がる。そこから、メンバー紹介も兼ねた個々のソロタイムに。ハジメタルのソロの運指の速度は、TUBEの楽曲に乗せられた演奏史上最速だったのではないだろうか。

西浦謙助、畠山健嗣

 6曲目は奈良県出身の西浦の隣町出身だというJITTERIN'JINNの「夏祭り」。Whiteberryのカバーで30代以下にもお馴染みのこのナンバーで、フロアも一気に縦ノリ仕様に。かなりの難曲をジメジメバンドは原曲仕様のアレンジで乗りこなしていく。特にドラムは大変そうな曲だと思うのだが、西浦は間奏でドラムソロまで披露、レペゼン奈良を炸裂させた。

 

 続いて、5人がそれぞれマイクを持ってステージ前方に登場。そして聞き慣れたオケが……。『24時間テレビ』でおなじみ加山雄三&谷村新司の「サライ」

サライ
日本の夏の風物詩

 あの誰もが歌えるサビで、会場が手振りと共に一体になる盛り上がりとともに曲が終了。メンバーはステージを下りたものの、観客からのアンコールで早々に戻ってくる。時間に余裕があるとMCを盛りすぎた結果、結局押してしまったようである。

西浦謙助、野佐怜奈

 そして、なんと野佐がドラムセットに座り、西浦はセンターに! 披露されたのは、作詞家としても活躍している西浦の、おそらく現在唯一となる作曲作品・「読モを抱きたい」であった。この曲が初披露されたのは、埼玉スタジアム2002で行われた「ぐるぐる回る2014」のこと。このイベントのために、トミタ栞のバックバンドを務める面々の特別ユニット「鈴木秋則町田昌弘西浦謙助おかもとえみトミタ栞」が結成され、各人が1曲ずつボーカルをとるライブが行われ、西浦歌唱で発表された迷曲がここに復活した。「サライ」で綺麗に終わらせまいとする、西浦の照れ隠しが存分に炸裂した1曲で昼のNISHIURA NIGHT vol.1は幕を閉じた。

 

 vol.0と通しで見て感じるのは、アイドルがロックフェスなどに登場するのは当たり前になっている昨今でも珍しい感じのする、良く言えばクロスオーバー、悪く言えば節操がないと思う人もいるかもしれない不思議なブッキングである。ナガイケジョーがザ・プーチンズを発見したように、出演者も含めて様々な出会いや交流が起こるイベントとして、昼なのか夜なのかはたまた朝なのかも分からないが、vol.2の開催を待ちたいところである。

昼のNISHIURA NIGHT vol.1集合写真
vol.0では撮り忘れていたらしい、終演後の全員(除く街角マチコ)集合写真